ボクシングと私
昨日のブログでは運動をする理由について私なりに解釈している利点を述べました。主にジムに通ってワークアウトすることをお勧めしたのですが、実は私自身はダンベルなどを使うマッスル・トレーニングは嫌いです。何故って、重いしつらいじゃないですか・・・そこまでムキムキになりたいわけじゃないし、つらいと続けられません。
私がジムに行く理由は体を動かして健康管理をし、体力をつけること。そして脳のパフォーマンスを上げ若さをキープすること。この2点につきます。
だからジムに行くと私はもっぱら大好きなサンドバックを5ラウンド(20分)ほど叩き、それが終わったら30分間有酸素運動をするだけです。10代の頃からの名残でボクシングをする時はサウナスーツを着るので、毎回汗が滝のように流れます。また、有酸素運動をする時は大好きなオーディオブックを聞く時間でもあり、要するに好きなことしかしません。先ほども述べたように、つらいと続けられず、続けられないと意味がありません。
今日の本題は19歳の時にボクシングを始めたきっかけについて、お話しようと思います。これがなかなか面白いんです。
私は19歳の時にニューヨークに住んでいたのですが、現地では頻繁に地元のギャングにからまれました。ある時は身につけているネックレスや貴金属を奪われ、またある時は着ている革ジャンを取られました。私は一人で相手は必ず複数でやってきて「金をよこせ」と脅します。それが1回や2回ではなく、10回とか20回とか頻繁に起きたのです。
住んでいる地域、外出する時間、目的地の地域も悪かったのは認めますが、それにしても何故自分ばかりこんなに狙われるのか不思議でした。また1980年後半のアメリカは治安が今ほど良くはなかったのは確かですが、それにしてもひど過ぎます。銃やナイフを突きつけられるし、複数名に囲まれては殴られるし、何度も血まみれになって一人の家へ帰宅。10代の私には精神的にもダメージが大きい出来事でした。今こうして生きているのは、まさに奇跡といえます。
ある時、20歳年上の日本人の先輩にこのことを打ち明けました。彼は若い時に京都大学で拳闘部(ボクシング)に所属し、関西で敵なしだった人物です。彼は私のことを「スキがあるからだよ」と襲われる理由について教えてくれました。
「ボクシング、教えてあげようか?」
と言われたので、即答で「お願いします!」と答えました。
それから直ぐに近くの公園へ行き、ボクシングの基礎を丁寧に教えてくれました。夢中になり1時間くらい教えてもらったでしょうか?「なかなかいいね~」とおだてられたこともり、その週には42丁目のタイムズスクエアの雑居ビル2階にあるボクシングジムに入会する流れになりました。これが私とボクシングの出会いです。
そのBoxingジムは映画「ロッキー」に出てくるような汚くて汗臭いジムでしたが、黒人やスパニッシュのアマチュアボクサーや世界で活躍するプロのボクサーもいました。当時の私は音楽しか興味がなく、身長180センチで体重は55キロの超モヤシ男でスポーツとは無縁でしたから、そこは全く足を踏み入れたことがない未知の世界。練習を重ねるごとに心からボクシングのとりこになり、無我夢中でトレーニングに励みました。
毎朝5キロから10キロのロードワークに始まり、ジムでは2時間ほどのトレーニング。しかも仕事をしながら高校にも行ってましたから、今考えるといつ寝ていたのかと思います。ジムでは忘れもしない「Joe」という黒人のおっさんをトレーナーに毎日基礎を叩き込まれました。家では彼がお勧めするモハメッドアリやシュガーレイ・ロビンソンのビデオを見て研究し、ジムで実践するといったことも試しました。
そして、ある時に気づいたのです。ここ最近ずっと全く誰からも襲われない!と。
毎日ボクシングのトレーニングを重ねることで、街をあるいていてもスキを見せなくなっていたのです。
正確に言うとボクシングを始めて以降、1度だけ夜中の電車で10人くらいのギャングにからまれました。かなり焦りましたが、彼らは血のついたナイフをもっており、誰かを襲ってきた後のようでした。
しかし、その時わたしはどうなったと思いますか?
なんと、逃げ切ったのです。
相手は10人はくだらず、ひとりでは太刀打ちできません。誰もいない電車の車両でクモの巣状態になったのですが、瞬時に逃げるという的確な判断を下し車両から車両へと逃げ切ったのです。最後は追い詰められ、口論になりましたが、その車両には他の乗客もおりましたので、大っぴらに暴力を振るうことはありませんでした。次の停車駅で扉が開くまでの時間がどれだけ長く感じたことか・・・・
とりとめのない話になりましたが、このような経験もあり、いまだに気の向くままボクシングを楽しむことができているわけです。
昔のようなハードなトレーニングには耐えられませんが、観戦するのも大好きですし、私を興奮させる数少ないスポーツです。
この年になっても自分の好きなことで体を動かすことができる幸せは、何にも代えがたい。わたしは音楽やボクシングなど好きなことに好きなだけ打ち込める最高にラッキーな野郎だと思います。