バスの運転手 アメリカ人編
その昔、わたしが10代の時にアメリカ大陸横断の旅に出た時のこと。
17歳だった私は全くの世間知らずで、日本の常識はおろか、アメリカでの常識も全く知らない青2歳。他人を2秒で信じて何の疑いも持たない子供でした。
ある時にグレイハウンドというバスに乗ってラスベガスからLAに向かっていた時。
ラスベガスのカジノでお金を使い果たしたと思われるヒスパニック系の30代男性がバスに乗り込んで来ました。彼は一番奥に座っていた私の隣に座り、何やら話しかけてくる。
当時は英語が全然わかりませんでしたが、私に話しかけてくるのだから友達になりたいのだろうくらいに思ってたんです。しばらくちょっかいをかけてきたのですが、私が全然英語を理解していないので、飽きてきたのでしょう。
すると彼は若い白人の女性の方へ行き、今度はその女性にちょっかいをかけました。女性は嫌がり(と言うことはイヤなことを言われていたのだと想像します)しまいには体に触れたりしている。
それに気づいたバスの黒人の運転手は車を止め、彼に注意をしに来ます。「今度やったら許さないぞ」みたいなことを言ったのでしょう。
するとヤツは私の方に戻って来て、ニヤニヤしながら私の太ももあたりを撫で始めました。しかも手を握ったりもしてくる。
どう考えても、何かが気持ち悪い。私は男です。男に太ももをいやらしい手つきで触れらたことは一度もない。
しかし、私は世の中には男も女もイケる両刀使いの存在がいることを知っているわけが無く、おかしいと思いながらも英語が分からないのでヘラヘラしていたんです。
すると近くにいた乗客が「何やってんだ!」みたいなことを言ってくれて、ヤツは一度私の元から離れました。
しばらくすると、またヤツは他の女性の方へ行ってちょっかいをかけ始めている。そして、それに気づいたバスの運転手がバスを停車させ、こちらに歩いて来ました。
「今度やったら許さないと言ったよな・・・」みたいな雰囲気になり、次にバスの運転手が取った行動に、乗客全員が拍手喝采になりました。
「Get Out (降りろ!)」
みたいなことを言ってヤツの首根っこをつかんで強引にバスから追い出したのです。
時間は真夜中、場所はラスベガスの砂漠です。街灯がひとつも無く、車のヘッドライトを消したら真っ暗。目をつぶった時と同じくらいに真っ暗で、ヘビとかサソリとかウヨウヨしていそうな砂漠の中。こんなところに一人で置いてかれたら、私だったら怖くて死んでしまう。
後から聞いた話ですが、ヤツはベガスで無一文になり帰るお金が無くて、それを見たバスの運転手が彼を可哀そうに思い無銭で乗車させてあげたのだとか・・・
そんな優しくて、人情味あふれるバスの運転手さんの行動。周りに迷惑をかける悪い奴は無条件に制裁する姿が勇ましくてスゲー。少年だった私には忘れられない思い出となり今でも記憶に残っています。
コメントを残す