人前でスピーチ
わたしはイベントやウエディングで音響の仕事に携わっているため、これまでに何千人という方々のスピーチを聞いて来ました。
スピーチの良しあしには経験が必要ですから、ほとんどの人は視聴者にうまく言葉を伝えるのに苦労しています。
ポケットから原稿を取り出したはいいけど、その原稿を持っている手が尋常じゃないくらい震えている・・なんてことは日常茶飯事。
また、祝い事などでは皆さん無難な挨拶をする傾向があり、インターネットで調べたの?ってくらい同じような言い回しで、同じような締めで終わる。それを聞いている視聴者も、やはり同じような反応。
視聴者の心が動くスピーチって、ひな形化された文章ではなく、その人の言葉で語ることが必要だと思うんです。
わたしが「これはスゴイ」と思ったウエディングのスピーチにこんなのがありました。
あるウエディングの最後のシーンで、新郎さんがゲストに向けて突然こんなことを言い出しました。
「オレさ、最後に嫁さんに伝えたいことがあるんだ。手紙書いて来たから少しだけ読ませて」と。
その新郎さんはポケットから原稿のようなものを取り出すと、彼女に向って話し始めました。その内容をすべて覚えている訳ではありませんが、自分の言葉を並べた、ぶっきら棒だけど熱量が伝わる。要するに彼が抱いている彼女への想いがストレートに伝わってくる。
最終的には3分くらいお話をして、その手紙を彼女に渡したんです。誰もが感動し、会場は大拍手に包まれました。そしてその手紙を受け取った彼女がこう言いました
「なんだ、白紙じゃない」と。
そう、彼は手紙を読むふりをして、切々と自分の言葉で彼女に愛を伝えていた。そこで新たに大拍手が起こりました。なんてイキな演出なんでしょう。
何が言いたいかと言うと、人の心を動かすスピーチってマニュアル化された文章ではないということ。自分の言葉でしゃべればいい。緊張してしまう場合は、周りの人は皆サルだと思えばいい。
自分を大きく見せたり、恥をかかないように恰好をつけても、聞いている人は全てお見通しなんです。
だから人前でスピーチをする機会があったら、自分が普段使っている言葉で想いを語ればいい。無難で当たり障りのない言葉じゃなくて、伝わる言葉でスピーチをする。
たくさんの方々のスピーチを聞いて来て、そんな風に感じるようになりました。
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