ジャニーズだけじゃない
1990年代の後半のこと。
私は音楽業界で一旗揚げるために「Jo’bow」(ジョボウ)と言う名で、日々R&Bアーティストとして活動をしておりました。当時はまだインターネットが普及していなかったので、主なアーティスト活動といえば以下の3つに集約されていたように思います。
1. ライブハウスやナイトクラブでの定期的なライブ活動
2. オリジナル曲の制作と作った曲のデモテープをレコード会社などに送付し宣伝活動をすること
3. アーティストとしてオーディションやコンテストなどに出演すること
今だったら動画を作ってSNSにアップするなど、個人アーティストが自分を売り込む際の手段は青天井に可能性がありますが、昔は違いました。なんせ大手のプロダクションやレコード会社のバックアップがないとメジャー活動はできませんでした。
だからこそジャニーズ事務所のような権力の集中がまかり通っていましたし、ジャニーズの件は氷山の一角で、日本の芸能界はヤクザの世界。すべての芸能人とは言いませんが、多くの芸能界で活躍している人たちがデビューまでの道のりで自分の夢をつかむために人には言えないような辛い出来事に蓋をしてきたことは確かです。
思い起こせば、私も1997年にアーティストデビューをするまでに自分の足であちこちに出向き、自作した楽曲を聞いてもらうために走り回りました。
一度はニューヨークの音楽プロダクションに飛び込み営業をして、毎日デモテープを配り歩いていた時期もあります。一番の思い出はデフジャムレコードの創始者、リックルービンに手渡しでデモテープを渡したこと。また、私と同時期にデビューをしていたブッダブランドの故Dev Large君にコラボをして欲しくてデモテープを渡したことも忘れられない。
コンテストやオーディションもできる限りエントリーしました。ケツメイシがまだ無名だったころに、同じオーディションに出演したこともあるし、千葉の田舎で行われた町おこしみたいなオーディションに参加したこともある。なんせ当時の自分は必死で、自分のことを売り込んでくれるプロダクション探しに明け暮れていたんです。
売れるにはアーティーストの実力や運は一番の要素かもしれませんが、それ以上に権力のある会社やアーティストにバックアップしてもらうことが何よりも重要だった時代・・・しかし、この構造自体は根強くて、今もさほど変わらないというのが本当のところでしょう。
だから若くて自分の夢をつかみ取りたいアーティストの必死な気持ちは十分に理解できます。
ただ、その一方でどんぐりの背比べみたいなアーティストから無数に売り込まれ、何を基準に売り込むアーティストを判断するか?「お前は体を張れるのかい」と職権を乱用して自分の欲求を満たす権力者もいることも理解できるんです。(ただし容認はしませんが・・・)
これは日本だけの問題じゃなくて、今でもハリウッドとか世界のどこの芸能界を見渡しても起きている出来事。
権力者のトップダウン構造が変わらない限り、一筋縄に短期決戦で終了できる問題ではなさそうです。
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