取り組み方しだい
私は30代後半から起業しましたが、雇われ身だった時にはなかなか気付かなかったことがあります。それはどんなにつまらない仕事に思えても「もらった仕事は精一杯尽くす」ということ。
ごく当たり前のことですが、自分の中で本当の意味を消化するまで時間がかかりました。起業だけではなく会社務めの方も同じで、周りからどんなにつまらないと思われる仕事でも自分が頼まれた仕事に対し、誰よりも必死に取り組んでいると面白くなってくるらしい。そして、それを見ている周囲は最終的に彼に好意をもつことになる・・・
私は22~23歳の時に夜間のパン工場で働いていた経験があります。その仕事は非常に単調でつまらなく、誰もやりたがらない仕事。
例えば、工場長から「今日のお前の仕事は出来上がった食パンを箱に詰める仕事だ」と言われたとします。すると8時間休みなくベルトコンベアから流れてきた食パンを箱に詰める。ただひたすら食パンを隣の箱に詰めるだけ、8時間もそんな単調な作業を続けるんです。
あまりにも退屈で、今どれくらい時間が経ったかな?と時計を見ると3分しか進んでいない。いい加減30分くらい時間が過ぎただろうと時計を見ると、まだ10分しか時計が進んでいない。こんなことが毎日続きあまりにも苦しいので、ちょっと考え方を変えてみた。
その日は工場長から「今日のお前の仕事はパンの表面にハチミツを塗る仕事だ」と言われました。そして仕事が終わる8時間後まで、ひたすらハチミツを塗り続ける仕事がスタート。夜勤で夜10時くらいから翌日の朝6時頃まで、とにかくハチミツを塗るだけ。
私はハチミツとハケを持ち、史上最高にキレイな「ハチミツ塗り」になってやろうと思いました。ひとつひとつ気を抜かず、とにかく丁寧にパン全体にハチミツを塗る。私が塗ったハチミツはとても美味しそうで、途中で何度も食べてみたくなります。ひたすらキレイに、キレイに・・・そうしているとどうでしょう?
あっと言う間に2時間、5時間が過ぎ、バイトはかつてないほどのスピード感で終了。私が変えたのは「気」の持ち方だけ。面倒くさいと思っていた仕事に対し、自分のもらった仕事を必死に取り組んだだけです。
その効果はテキメンで時間が早く過ぎた以外にも、単調な作業ながら少なくても仕事に対して興味が沸いた。そして、周りの人からも「頑張っている風」に見られました。
その日以降、工場長から「余っている菓子パン、好きなだけ持って帰っていいよ」と言われ、大きなレジ袋の入りきれないほどの菓子パンを持って帰った記憶があります。
今はこうして人の雇用を生む立場になり、個々の仕事の取組みを客観的に見ています。文句を言いながら仕事をしている人もいれば、与えられた仕事をきっちりこなす人もいる。与えられた仕事以上のことをしてくれる人は稀ですが、そういったありがたい人も存在します。私自身は彼らに考えや想いを伝えることが仕事で、彼らに必要以上の期待はしませんし強要もしません。
でも、人間ですから頑張っている人には贔屓にしてしまう。私が工場長から袋一杯の菓子パンをもらった時のように、そこは平等ではありません。
コメントを残す