トム・クルーズ来日中止の理由
明日2023年7月17日に予定されていたトム・クルーズの来日が中止されました。
トム・クルーズは7月21日(金)から日本で公開が予定されている新作映画「ミッションインポッシブル~デッドレコニング」のPRの為に、記者会見を含む来日イベントが予定されていました。実は私もこのイベントに関わることになっていたので非常にショックです。
しかし、来日中止の理由を知って納得。これは映像ビジネスに関わるほとんどの方々にとって、歴史的な正念場になっていると感じます。
その理由はハリウッドの脚本家組合と俳優組合が、制作者協会に対してストライキを行うことを決行したため。63年ぶりとなる大々的なストライキを行う原因となった主な理由が以下の2点。
1. ネットフリックスなどの定額配信サービスにより、作品に出演している俳優達が適正な印税を支払ってもらえなくなったこと
2. AIによる脚本への著作権侵害、俳優への肖像権を不適切に使用されるなどの懸念
※以下はANN newsによる動画での説明
アメリカでは過去にテレビが市場に出回り、テレビ番組で映画が再放送された際にも、同様のストライキを起こし印税に関する権利を獲得している他、1980年代に映画のDVDが出回った際にも、印税の支払いを求めることにストライキを起こし勝利している歴史がある。
なので、今回のケースも同様に動画の定額配信サービスによりDVDの収入が激減し、俳優や脚本家に適正な印税が支払わなくなったことに不満を募らせていた背景がある。
また二つ目の理由、AIによる懸念は俳優組合と脚本家組合によって異なる。
俳優組合:
俳優がスキャンされAIに学習させることによって、声や動作などを二次元的に使用されること。制作側はスキャンした使用権を半永久的に所有し、映画などの制作に使用してしまう。実際に最近はスキャンだけの俳優オーディションも頻繁に開催されており、1日10万円のギャラのみで俳優としての可能性を明け渡してしまう、という理由。
脚本家組合:
AIが過去に制作された脚本を学習することによって、AIによる映画の新作が無数に出回ってしまうことへの懸念。要するに脚本家としての仕事がAIに奪われる懸念と、過去作品の脚本の著作権管理が規制されないまま、AIが大量の情報を搾取してしまうことへの懸念。
ぶっちゃけトム・クルーズ級の役者になると、1度の映画の出演料で莫大なお金を手にするので、そこまで影響は無いのかもしれない。ただ、映画界を代表する役者としてストライキに参加し、俳優組合のメンツを潰すわけにはいかないのだろう。
このストライキが長引けば、映画出演者が新作映画を宣伝することができなくなり、ハリウッド業界全体に直接大きなダメージを与えることは確実。
音楽業界でもスポーティファイやアップルミュージックなどのサブスクリプションによって、アーティストの収入が激減し、生活が苦しめられた背景があるから、当然の流れかもしれない。
日本も同じく、まだまだデジタル技術の急速な発展によるアーティストへの法的な整備が追い付いていない。自分たちのように芸術関係でメシを喰っている業界人にとって、AIの急速な技術革新ともっと折り合いを付けて関わっていくインフラ作りが今すぐ必要と感じる。
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