義父からの手紙
活動自粛のため時間があり、久しぶりに昔の荷物を整理していたら、今は亡き義父からの手紙が見つかった。
義父との付き合いは私が10歳から15歳くらいまで。昔は家庭内の環境が変わる度に強いストレスを感じていたが、今考えてみると実父とは全く違うタイプの人間を見て育ったことで、価値観や考え方に刺激を受けた。ほとんどの人は一人の父親からしか教育されないのを考えると、実は他の人よりも恵まれていた環境だったと言える。
その義父の口ぐせは「これをやらせたら誰にも負けない特技を持て」ということ。非常に起用な人間で早稲田大学の在学中は飛行機作りに夢中になったと聞いたことがある。どんな複雑な機械もすぐに仕組みを理解し分解して修理できる人だった。その一方で狂気じみた面もあり、キレると暴れて暴力を振るったり窓を割ったりと手の付けられない面もあった。
彼がいつ亡くなったかは知る由もないが、30年前に彼がニューヨークに住む私へ送ってくれた一通の手紙を見つけたので簡略化した内容を書き留めておく。
義父からの手紙
前略~他人が何と言おうが自分の思った道をまっすぐに進みなさい。他人は中傷こそするもの、あなたの人生に責任を取ってくれることはないでしょう。そのためには、自分の人生において、あっても無くてもいいものは全て捨てること。特に固定観念や他人の思惑、自我などである。 あなたはこれからの人生の中で沢山の出会いを経験するでしょう。あなたは独創的な性格で人との接し方に問題があるから気を付けなさい。「人間」という漢字は「ひとのあいだ」と書くよね。人と接し、人に尽くすこと。人との出会いを大切にすることで、のちに彼らがあなたの力になってくれるはずです。 これからの時代は「自分は何をやるか?」よりも「自分とは何なのか?」を考えることです。それには何層にも覆われている自分の心理をひとつひとつ剥ぎ取って、自分を発見することです。 人間は一生の間に何度もお灸をすえられることがあります。しかしそれに遭遇し乗り越えていく度に人間の器が大きくなります。今あなたがやっている日々の仕事で上手くいかず不安になることもあるでしょう。それでも続けていればチャンスが見えてくるものです。その運にぶつかった時は積極的に効率よく、要領よく対応しなさい。
以上、大筋このような内容の手紙でした。
もらった当時は10代でしたから、何も心を打たなかったのですが、今読み返してみると何と心に響くことでしょう。
彼は学生時代にJazzにのめり込み、親に音楽をやらせて欲しいとお願いしたそうですが、それが叶うことはなかったと綴っています。そんな経験があってか、彼は私がバンドにのめり込んだ12歳の時にドラムセットを手作りしてくれたり、エレキギターを作ってくれたりした・・・そんな人でした。
私も一旦は音楽業界から足を洗いましたが、今自分がこうやって音楽の仕事を続けていることは偶然ではなく、必然なことと自覚しています。だから人一倍使命感を持って音楽を届けることをライフワークにできる「DJという仕事」を選びました。こういった形で今後の人生を変えるほど自分を見つめる時間が確保できるのは、コロナで休業しているポジティブな点だと考えます。
こんな手紙をもらっていたなんて…知らなかった。
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